読了前に返却期限が来てしまった本をバスの中で 慌しくめくる。「秦漢時代の文献資料でも丹念に読めば いくらでも論文は書ける」とかいった記述も面白いが、 発掘資料による、前漢末(成帝時代)の、とある地方(東海郡)の 人口調査記録が目に停まった。
約200km四方程度の広さの土地に約140万人が住んでおり、
男性51%に女性49%、6歳以下が18.9%、80歳以上が2.4%、
90歳以上が0.8%、といったデータが紹介されていた
(引用数字は少し足を切った)。
現代の日本や中国に比して、幼年人口が非常に少ないことや、
超高齢者人口が非常に多いことなどが述べられている。
疑問に思ったのは、この数字の実質である。
統計資料に関わる官吏たちがインチキをした可能性についてではない。
ぶっちゃけて、「統治下に居住していた人々が、自分の年齢を
正確に申告する意味合いはどれほどあったのか」である。
現代、多くの国家に於いて、行政能率化や公平性確保の観点から、
生没年に始まる年齢を正確に把握しなければならない
ことになっている。
構成員にとっては、就学通知、選挙権、各種免許、年金などに
年齢が重要な意味を持っており、「自分の年齢」を常に意識する
ことが当たり前に求められている。
この常識が、2000年前の庶民の常識であったのか、正直の所
甚だ疑わしい。
共同体の成員として認められるための条件(通過儀礼のひとつとか)
についていえば、人間の心身成長の個体差から考えて、
「出生後の時間」は必ずしも絶対的な基準ではなかったはずである。
国民国家成立以前についていえば、徴税、徴兵、治安維持、高齢者優待、 婚姻統制などが年齢把握の必要性としてあげられそうだけど、 被治者から見れば面倒なパラメータでしかなかったかもしれない。
年齢の嘘についても、もう少し調べたいところだ。
邦訳を書庫から出してもらい、何ページかめくってすぐ挫折した
のが何年前か、もう忘れている。
なのでタグも変えておく。
覚えていることを書けば、幾何学と天文学がくっついており、
緻密な論理構成になっているらしい、という読後感くらいである。
いわゆる「天動説」が、天体の運行をぼんやり眺めた結果得られた、素朴な
現実認識とは限らないこと、くらいはわかった。
「天動説」が、「間違い」(少なくとも現実の惑星運動を説明するモデル
としての妥当性に甚だ欠けるもの)であることはもちろん知っている。
が、この本が、どうしてそういうモデルを採用することになって
しまったのか、そして、どこからどう間違ってるのかは、
ぜんぜん分からなかった。
自分の読んだ限りの幾何学について、少なくとも一部は正しかった。
天文学については、「なんだか結論が変だ」と思う程度のことはあった
気がするが、確認できる頭も時間もなかったはず。
要するに、この本の内容を理解して、「どこが正しい」「ここは間違い」と
正確に、というより精確に判定するには、それなりの知識と時間がかかる。
これはアルマゲストに限らないだろう。
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